これから矯正治療を始めようとお考えの方は、まず、「矯正治療ってどんなことをするのか?」「どんなことができるのか?」ということからお調べになっていることと思います。
矯正歯科医の立場からは、お口の状態も治療のゴール(どんな歯並びにしたいのかなど)も患者さんごとに異なりますので、やはり一度ご来院いただいて実際にお口の中を拝見しながらお答えしたいところなのですが、患者さんの立場では、相談のために何軒もの矯正歯科医院に足を運ぶのは大変だから、概要だけでも先に知りたいとお考えだと思います。
そこで、当院に寄せられた矯正相談やカウンセリング時に受けた質問などの中から、よく相談を受けるお悩みや、患者さんに知っておいていただきたい事などをピックアップしてまとめてみました。
一般的なお話になってしまいますが、歯並びや咬み合わせでお悩みの方の助けになればと思います。
常陽リビングで連載していた「リビングクリニックQ&A」をまとめた「矯正治療Q&A」もあわせてご覧ください。
歯の舌側に装置をつける「オーダーメイド」のカスタムメイド型リンガルブラケット矯正装置(インコグニート)
最近では欧米風に「矯正治療はステータスの証」という風潮も生まれていますが、まだまだ日本人は「装置が目立つのは嫌だ」感じる方が多いようです。
矯正治療の仕上がりや効果の点のみで言えば、歯の表側に金属の装置を装着し、ワイヤーの弾力で歯を少しずつ動かす一般的な矯正治療(唇側矯正)が調節が容易で一般的なのですが、装置が見えないことを希望される患者さんのニーズに合わせて、歯の舌側に装置を装着したり、透明なマウスピースを用いたりする、いわゆる「目立たない矯正」の研究も進められて来ました。
歯の舌側に装置を装着する「舌側矯正(舌側矯正・リンガルブラケット)」は、装置を気にする日本人のために日本人が開発したテクニックです。そこから世界に広がり、現在では、ドイツで完全オーダーメイドの矯正装置を用いるカスタムメイド型リンガルブラケット矯正装置(インコグニート)が生まれるに至りました。(この装置は、2008年に厚生労働省の認可を受けています。)
複雑な形状の歯の舌側に装置を装着する舌側矯正は、装置が外れやすかったり、調整に時間がかかるため患者さんに長い時間口を開けたままでいていただかなければならなかったりするのですが、当院で導入している当装置は、歯の形にぴったりと合った装置をオーダーメイドで作りますので、装置がはずれにくく、調整時間も短くすることができます。 また、歯にぴったりフィットしていて口の中での違和感が少ないこと、ブラケットの材質による金属アレルギーのリスクが低いこと、装置の精度や強度も十分に高いことから、当院では一般的な舌側装置ではなく、当装置を用いた治療を行っています。
カスタムメイド型リンガルブラケット矯正装置(インコグニート)について詳しく読む
「永久歯がありません」と言われたら
当院でもしばしばご相談を受けますが、最近、大人になっても永久歯が生えて来ない「先天性欠如歯」の相談が増えています。
日本小児歯科学会の調査によると、小児歯科を受診する子供の約1割に先天性欠如が認められたということですので、決して珍しい症状ではありません。お子さんが歯医者さんで「永久歯がない」と言われても、あまり心配なさらないでください。
永久歯がない部分はしばらくは乳歯がそのまま残っていますが、元々乳歯はそれほど丈夫な歯ではありませんので、遅くとも20代から30代までには抜けてしまうことがほとんどです。
一般の歯科医院ではインプラントやブリッジでの治療を提案されることが多いかと思いますが、全体の歯並びや咬み合わせによっては、矯正治療が最も適していることもあります。
がたがたの歯並びや、いわゆる出っ歯の方は矯正治療のために抜歯が必要となることが多いのですが、先天的に欠損しているスペースを利用することができるかもしれません。
矯正治療なら、隙間をなくすのと同時に歯並びや咬み合わせも改善することができます。「先天性欠如歯」を矯正治療のきっかけにされてみてはいかがでしょうか?
なお、2014年から「6歯以上の非症候性部分性無歯症」の方の矯正治療が保険適用可能となりました。
有効なこともありますが、因果関係が立証されていません
顎関節症とは、あごの関節が正常に機能していないために口を開くことができなくなったり、あごを動かすと痛みやシャリシャリという音が出たりする症状が現れることです。20代〜30代の女性にかなり多く見られます。日本顎咬合学会の調査によれば、女性の2割、男性の1割に当たる方に顎関節症の疑いがあるそうです。
顎関節症はかみ合わせと関係が深いことから、矯正歯科の治療で歯列やかみ合わせを改善することで、顎関節症の症状も改善させることができると考えられていたことがありましたが、現在では、それが正しいとは言えなくなっています。
顎関節症はひとつの原因によって起こるのではないことが明らかになっています。最近では、ストレスがその大きな原因のひとつとして取り上げられていたように、様々な要因によって引き起こされます。残念ながら、実際に顎関節症と矯正治療の関連性を調査・研究した結果、矯正治療よりも、その他の要因による変動が大きいとされた報告もあります。
ただし、顎関節症治療において、矯正歯科が全く無意味ということではありません。顎関節症や、スプリント治療によってうまく咬むことができなくなった患者さんに、咬合治療として矯正を行うことは、歯を削ったりする必要がない分、他の治療法より有効な治療法かもしれません。
顎変形症、唇顎口蓋裂の矯正治療
矯正歯科の治療相談でしばしば受ける質問のひとつに、「保険の矯正を受けることはできないか?」ということがあります。
原則として保険が適用されない矯正歯科治療に保険を適用することができるかどうか、であれば、「当院であれば、症状によってはできます」という事になります。保険の矯正を受けたいと希望して叶うかどうか、であれば、「患者様の希望により適用が可能になるものではないため、保険が適用される症状でなければ、希望されても適用できません」ということになります。
それでは「保険が適用される症状」とはどんな症状かと言いますと、ごく簡単に説明すれば、ダウン症候群や唇顎口蓋裂など厚生労働省が認める先天性疾患に付随する不正咬合の矯正治療や、重度の顎変形症(あごのずれが大きく、顔面の変形や咬み合わせの機能障害があるような状態)で、歯を並べる矯正治療単体では改善できないため、あごの切離手術の併用が必要と診断されるケースがそれに当たります。
当院は指定・認可を受けている指定保険医療機関、指定自立支援医療機関(育成医療、更生医療)、および顎口腔機能診断施設です。唇顎口蓋裂・顎変形症(外科手術を併用する場合)の矯正治療については、保険でおこなうことが可能です。ぜひご相談にいらしてください。
歯を自然のまま残すことを選ぶか、早さを選ぶか
矯正治療のデメリットのひとつに、「治療期間が数年と長期に渡ってしまうこと」があります。
治療を終えられた方の多くは「あっという間でした」とおっしゃるのですが、これから矯正治療を始めようとしている方には2年、3年は気の遠くなるような長さに感じられることでしょう。
そこで「短期間でできる矯正」「数回の通院で終わる矯正」と称して、セラミックを被せる審美治療をすすめる歯科医院があるのですが、セラミックを被せる歯科治療は、矯正治療とは全く異なるものです。
【矯正歯科】
歯を根から動かして、歯並び・咬み合わせを改善する歯科治療。
歯の移動に2〜3年の期間が必要だが、咬み合わせを全体的に改善することができる。
咬み合わせに影響する場合は奥歯や小臼歯を抜歯したり、わずかに削ることがあるが、天然の歯を削って冠をかぶせることはない。
【審美歯科】
歯を削って作った土台に、セラミックなどの白い人工歯を貼り付けたり被せたりする歯科治療。
本数が少なければ2〜3回の通院で終了できるため、短期間の矯正と称されることも。
歯を大きく削ったり、歯の神経を取り除いて角度のついた土台を入れたりして歯の向きを変えて歯並びを整えるため、全体的な咬みあわせの改善は難しい。
どちらが良いかについては、患者様が何を最も重要とされるか(短期間で終わることか、咬み合わせまできちんと改善することか、歯へのダメージを最小限にすることかなど)によって異なりますが、どうしても短期間で終わらせなければならないという差し迫った理由がないのであれば、矯正歯科を選ばれることをおすすめします。
矯正治療にも、症状によっては抜歯を伴うことがありますが、審美治療は歯を削ってしまうことが前提で、虫歯のない健康な歯であっても神経を除去しなければならないケースも多い治療です。神経のない歯は天然の歯よりももろく、寿命が短くなってしまいますので、将来的なお口の健康を考えると、歯を削らない矯正歯科の方がメリットが大きいかと思います。
つくば毛利矯正歯科
茨城県つくば市春日2-2-7
診療時間
平日:10:00〜18:30
休憩(13:00〜14:00)
土曜・日曜:10:00〜18:00
休憩(13:00〜14:00)
休診:日曜日(※)、木曜日、祝日
※日曜日は月1回診療いたします。
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