矯正治療は数年の時間をかけておこなう必要があり、また、一度始めてしまうと途中で中止したり転院したりすることが難しい歯科治療です。 治療を始めるに当たってさまざまな疑問や、不安に感じることがおありなら、複数の矯正歯科医院でカウンセリング(セカンドオピニオン)を受け、納得できる歯科医院を探すことが大切です。
Q
小3の女子です。学校検診で不正咬合と指摘されました。あまり気になってなかったのですが、矯正治療は必要なのでしょうか。
A
不正咬合は、歯のでこぼこや、前歯が反対のかみあわせ、出っ歯、前歯が咬んでない、かみ合わせが深いなど、咬み合わせや歯並びの異常です。
かみ合わせが悪いとよく噛めませんし、歯並びが悪いと歯がみがきしにくいので学校検診や歯医者さんで治療をすすめられます。しかし、お口のなかの細菌が原因でおこるムシ歯や歯肉炎などと比べると、よりよい環境にする高次な治療と考えらえます。またわが国では、一部の重度の先天異常以外の場合は、矯正治療に健康保険がききませんので、患者さんのご意向も尊重すべきです。
矯正歯科では、歯の健康上の基準から、歯科医が1)客観的矯正治療必要度(重症度)を判定しますが、それに加えて、ご本人や保護者の方が、どのくらい気になっていて治したいかという2)主観的矯正治療必要度や、一般の方の見た目の判断で、違和感が強くないかという3)社会的矯正治療必要度という観点から、個別に、総合的に判断する必要があります。
歯の矯正治療に関しては、歯科医の判断だけでなく、ご本人や保護者の方のお考えも重要な要素となってきます。矯正治療を担当される先生と必要性についてよく相談されて、どのようなことが矯正治療でできるかよく納得して、判断されるのがよろしいかと思います。
Q
小5の娘のことですが、歯並びが悪く矯正治療を考えています。治療費が歯科医院により違うようですが?
A
歯の矯正治療に関しては、わが国では一部の先天異常の場合を除いて、健康保険の適用でないので、多くの場合は自費診療ということになります。全額自己負担ですので負担が多くなり、また、医師会等で協定料金を決めることはできませんので、各診療所の経費や技術レベル等によって、診療所毎に決めることになります。
一方、私が留学していた北欧のスウェーデンでは、成人前の矯正治療は原則として保険治療で、専門医の治療は一般歯科医の1.5倍程度の料金でしたが、料金が決まっていて、問題になることはありませんでした。
わが国で、どのくらいが適正な費用かというのは議論のあるところですが、大学病院の矯正料金が参考になるかもしれません。大学の料金は、初診料が3〜5千円くらい、精密検査と診断が、8〜10万円、矯正治療費が、本格矯正治療の場合60〜90万円くらい、月々の調整料が、5〜6千円のようです(インターネット等で確認できます)。また、最近では、ホームページに、料金の目安が明示されている診療所が多いようです。
矯正治療は期間が長くかかることもあって、かなりの費用になりますので、担当される先生とよく相談されて、料金についてもよく納得された上で、治療を開始されることをお勧めいたします。
Q
小2の男子ですが、歯科医院で矯正治療を一刻も早くはじめたほうがよいと言われましたが、友人のお子さんは、別の歯科医院で永久歯になってからと言われたそうです。
A
子供の矯正治療時期については、乳歯が残っている時期(混合歯列期)に開始する1)早期治療(予防矯正:第一期治療)と永久歯に生え代わってから開始する2)本格矯正治療 があります。前者は、小2〜4頃に開始しますが、後者は、12歳以降が多いです。早期治療の後に、第二期治療として後者が必要になることもあります。
早期治療を行った方がよいかについては、個別に、慎重に判断する必要があります。具体的には、早めの治療開始によって、永久歯期の治療が不要になる場合や、永久歯期に再度の治療が必要でも、治療が有利になる場合、本人が気にしていて早めに改善しておいた方がよい場合などです。
ご存知のように、この時期は、歯の生え変わりやあごの成長が活発で、大きな変化があります。ある程度の予測はできますが、あらゆる変化の可能性にも配慮して治療を進める必要がありますので、経験が必要です。
治療効果や効率の点から、以前に比べて早期治療を行う割合は、やや少なくなりましたが、どちらにしても長期的な観点からの見とおしをよく聞いておくことは大事なことです。矯正担当の先生と十分に相談されることをお勧めいたします。
Q
中1の娘ですが、歯がでこぼこで、出っ歯です。永久歯を抜歯して治療する方法を説明されました。抜歯をしなくてもよい方法があると聞いたのですが。
A
矯正治療のために、健康な永久歯を抜歯すると聞いてびっくりされる方は多いです。歯科医にとっても抜歯を決めるのは大変です。私の娘の矯正治療で抜歯した時も複雑な気持ちでした。
非抜歯治療は魅力的ですが、歯がでこぼこの状態になっているのは何らかの原因(歯が普通より大きい等)がありますので、抜歯して治療した場合と非抜歯治療を比較すると、当然、治療結果は異なります。
具体的には、非抜歯の場合には前歯が出っ張りやすく、かみ合わせが浅くなりやすく、あまり無理に歯を並べると治療後の後戻りが心配です。
実際、非抜歯で長く治療していたのに、満足できずに再治療希望で来院される方が結構おられます。どのような状態であっても、一度歯を並べることは難しいことではありませんが、かみあわせに問題が生じて、お勧めできない場合も多いです。
お嬢さんの場合も、歯を抜いて治療した結果と、歯を抜かないで治療した結果を予想して、より妥当と思われる治療方法を選択することが大事です。もちろん、患者さんのご要望によっては、問題点を説明した上で、多少無理をして非抜歯の選択肢を提示することもあります。その場合でも十分な説明や対応策が必要となります。
Q
35歳の女性ですが、子供の頃から歯並びが悪く、コンプレックスを感じていました。今からでも矯正治療は可能でしょうか。
A
矯正治療は、十分可能です。ただし、歯の状態が悪い場合(むし歯や歯周炎で)には、そちらの治療を先行するのが原則です。私の患者さんの例では、69歳の時に矯正治療を開始した患者さんがおられました。この方の場合は、私が思っていた以上に喜んでいただきました。歯の状態が管理されていて、心身の健康状態に問題がなければ、年齢は関係ないと言ってよいと思います。
また、以前からコンプレックスを感じておられた成人の方の場合は、治療後には、早くやっていればよかったと言われる方が多く、治療に対する満足度が、若年者よりも高いようです。
治療期間については、やはり年単位(月1回来院)の治療となりますが、若年成人に比べて、治療方針が異なることもあって、短くなることもあります。また、矯正治療のために歯につける器具は、通常の矯正と変わらないものですが、最近は、目立たない透明な器具(ブラケット)や白いワイヤー、歯の舌側につける器具や、透明な取り外しのできる矯正器具などがあります。
また失った歯がある場合でも、矯正治療を行うことによって、歯のない部位への入れ歯やインプラントの治療が、よりよい条件で行える場合があります。今まで、矯正を諦めていた方も、一度、矯正担当の先生に相談されることをお勧めいたします。
Q
高2の娘のことですが、小学生の頃、近くの歯科医院で受け口の治療を受けたのですが、また反対になってしまい、下アゴが出た顔つきになっています。手術を併用する矯正治療があると聞いたのですが。
A
顎変形症という診断がつけば、外科手術を併用した矯正治療(外科的矯正治療)が、健康保険で可能です。治療は、約2年程度の矯正治療(術前矯正治療)を行った後に、大学病院や総合病院等で、下アゴや上アゴの位置を移動する手術を行い、さらに1年程度の矯正治療(術後矯正治療)を行ないます。一般的な矯正治療よりも、期間が長くなる傾向があり、2週間程度の手術入院も必要です。また、保険で顎変形症の矯正治療を行うことができるのは、自立支援の指定や施設基準を満たした診療所に限られ、手術の時期は成長終了後となります。
顎変形症としては、下アゴの出ている下顎前突や、上アゴが出ている上顎前突、前歯が咬んでない開咬、アゴが曲っている顎偏位などがあり、それらが骨格性で重度な場合です。ただし、そのような場合でも、入院ができない等の理由から、矯正治療のみの「代替(カモフラージュ)治療」を希望される場合があります。治療結果は同じでなく、治療費も保険外となりますが、かなりの患者満足度が得られる場合があります。
一度、顎変形症の矯正治療を扱っている専門の先生によく相談されることをお勧めいたします。
Q
小4の娘のことですが、八重歯について相談したところ、すぐ始めないといけないと言われました。別の医院で相談したところ、永久歯になってからで大丈夫と言われました。先生によって随分違うようですが。
A
矯正治療の目的は、永久歯列がすべて生えそろったころに、よい咬み合わせにするのが目的ですので、早めに治療開始するかどうかや、将来、矯正治療のための抜歯が必要かといった長期的判断は、専門家にも難しいことがあります。
一目で、だいたいの方針が予想できるケースもありますが、中間的なケースでは複数の治療方針が考えられることが多いです。しかも、治療結果は方針によって違うと予想されますので、専門教育や経験の程度にもよりますが、どの方針を採用するかがポイントとなります。
矯正治療を開始する際には、かならず歯型やレントゲン、写真などの記録を残すと同時に、長期的な治療計画を立案し、わかりやすく説明するために矯正検査・診断は必須です。
患者さんへの説明も、以前は医師中心型で、医師の結論だけを説明することが多かったようです。しかし、最近では患者中心型で、考えられるいくつかの選択肢を含めた治療計画案を説明し、相談して治療計画を決定することが推奨されています。治療方針を理解することは大変重要ですので、なんでもよく相談し、疑問点は遠慮なく質問されることが大事です。
Q
娘の矯正治療について歯科医院で相談したところ、矯正専門の診療所を紹介されました。歯科医院によっては、矯正も一緒にやってくれるところがあるようですが、どう違うのでしょうか?
A
医科分野の場合は、専門分野のトレーニングを受けている専門医の方が、年間数例しか治療してない一般医よりも治療の質が高いことを根拠として、専門医に紹介することが推奨されています。しかし、どこまで専門的治療が必要かという議論もあり、近くに専門医がない等の地理的要因もあります。
歯科の場合も同じで、特に口腔外科と矯正歯科は専門性が高いです。専門医の役割は、難度の高い症例を治療すると同時に、一般医と協力して地域医療を向上させることです。したがって、治療の難度が低く、複雑でないケースでは、紹介医の先生に治療をお願いすることもあります。実際、英国の保険制度では、矯正歯科コンサルタントという専門医相談サービスがあり、専門医による相談(診断)がシステム化されています。
矯正治療では、歯を移動する技術も必要ですが、治療が長期間かかることもあって、矯正治療の診断(治療計画)はさらに重要です。治療難易度の判定などは、専門的なトレーニングや経験がないと難しいです。わが国ではそういった連携システムがまだ十分とは言えませんが、かかりつけの先生に紹介されたよい機会ですから、専門の先生によく相談されるとよいでしょう。
Q
小4の娘ですが、生まれつき歯が2本足らないと歯科医院で言われました。将来入れ歯が必要と言われましたが、一度、矯正の先生に見てもらうように言われました。どんな治療ですか。
A
生まれつき永久歯がない先天性欠如は学童の11%ですので、意外に多いです。また、先天的ではありませんが、歯の外傷経験も多く、その結果歯を失うケースもあります。さらに、歯が埋伏している場合やムシ歯で歯を失ったものも含めると、かなりの学童が、歯がない(歯の欠損)問題を抱えています。うまく咬めませんし、前歯だと見た目の違和感も強いです。
このような「歯の欠損」に対する歯科治療は、次のようなものです。1)補綴(ほてつ)治療:両隣りの歯を削ってブリッジにしたり、取り外しの入れ歯、2)矯正治療:両隣りの歯を移動して欠損部を閉鎖、3)インプラント(チタン製の人工歯根)、4)歯の自家移植、(親知らずなどを)があります。
成人の場合は、ブリッジや入れ歯が一般的ですが、若年者の場合には避けたいものです。また、インプラントは、18歳以下はできません。歯の移植は可能ですが、ケースが限られます。一方、矯正は、特に不正咬合がある場合には有効な治療になりますし、自分の歯で治すことが可能です。
かかりつけの先生が、そのようなことをご存知で勧められたのではないかと思います。矯正専門の先生に、一度相談されるとよいと思います。
Q
24歳女性です。矯正の器具は、金具が見えるタイプのものが多いようですが、それ以外にどのようなものがありますか。また、治療の仕方も違いますか。
A
成人の場合では、目標とする歯並びとかみ合わせにするために、全ての歯を調整する必要があります。最も一般的な治療器具は、歯の表面(外側)に金属や透明の矯正器具(ブラケット)を装着して、細いワイヤーで治療する方法です。しかし、最近では、歯の舌側にブラケットをつける「舌側矯正」や、透明な薄いプラステイックで作られた取り外しの器具を取り替えて、少しずつ移動する治療法(マウスピース型カスタムメイド矯正装置(インビザライン) )などが考案されています。
透明なブラケットや白色ワイヤーは材質が違うだけですが、舌側矯正の場合は特殊です。離れた部位(歯の内側)に力を作用させて、歯の外側を揃えなければなりませんので、より精密な調整が必要です。また、歯の舌側の形は千差万別です。表側の器具では既成のブラケットを使用しますが、舌側矯正では、個人毎に各ブラケットやワイヤーをオーダーメードで製作してもらう必要があります。したがって、費用は割高になります。
一方、マウスピース型カスタムメイド矯正装置(インビザライン) では、歯に直接作用させる場合に比べて歯の精密な移動や複雑なことができません。取り外しできますが、1日22時間使用です。このような治療器具の特性にも配慮して、どのような治療法が適当か判断する必要があります。
つくば毛利矯正歯科
茨城県つくば市春日2-2-7
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平日:10:00〜18:30
休憩(13:00〜14:00)
土曜・日曜:10:00〜18:00
休憩(13:00〜14:00)
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