歯周病と矯正治療

大人の矯正治療

つくば毛利矯正歯科は、矯正歯科治療と並行して、予防処置にも力を入れているのが大きな特徴です。予防用のユニット（プロフィラクティス）のお部屋をご用意し、担当歯科衛生士によるお口のなかの健康管理をおこなっています。とくに大人の方の場合、歯周病をケアしながら矯正治療をおこなうことで、健康で美しい歯並びを長期間維持していただくことが可能になります。

歯周病でも矯正治療ができる？

重度の歯周病（歯周炎）の患者さんを対象にした、歯周治療後の矯正治療による歯槽骨（歯を支える骨）の喪失に関する研究調査が、ノルウェーのオスロ大学で行われています※1。この研究結果では、全体としては、矯正治療をした場合でも特に骨を失うリスクが高まるとはいえない、とされています。しかし、スウェーデンで行われた動物実験では、歯周ポケットのある歯の移動時に、歯周ポケット内のプラークと関連した歯周病の悪化が生じる可能性があることが報告されています。※2

もちろん、歯周病（歯周炎）は、歯の周囲の歯垢（プラーク）の中の細菌が原因となる感染性の炎症です。したがって、矯正治療にあたっては、患者さん自身がしっかりとプラークコントロールを行うこと・歯科医師や歯科衛生士による歯周治療後に定期的にメンテナンス・ケアーを行い、歯周ポケット内を清潔に保つことが、最も重要になります。現在では、かなり歯周病（歯周炎）が進行したケースでも、矯正治療は十分可能です。ただし、治療前にきちんと歯周治療が行われていて、治療中も歯周炎がコントロールされている必要があります。※3

つくば毛利矯正歯科では、歯科衛生士スタッフを中心に、お口の衛生指導・管理には特に力を入れています。矯正治療前のブラッシング指導や治療、また矯正治療中も歯科衛生士による定期的メンテナンスを行うことで、歯周病のリスクをあげることなく矯正治療を行うことのできる体制を敷いています。

大人の矯正治療例（症例）

※1　Zachrisson BU, Alnaes L.: Periodontal condition in orthodontically treated and untreated individuals. Angle Orthod. 43:402-11.1973.
※2　Wennstrom JL, Stokland BL, Nyman S, Thilander B. Periodontal tissue response to orthodontic movement of teeth with infrabony pockets. Am J Orthod Dentofacial Orthop. ;103:313-9.1993.
※3　毛利環、田口洋、岡本浩、花田晃治：スカンジナビアにおける歯周矯正の基礎ならびに臨床研究　the Quintessence 17,1665-1672,1998.

歯周病は大人の病気、ではない

歯周病は中高年以上の大人がかかる病気、と従来は考えられてきました。しかし、スウェーデンで発表されたある研究結果によれば、乳歯期や若年期にも（決して多くありませんが）１～数％の患者さんに若年性歯周炎＊やその兆候がみられる、とのことです。以前に当院の院長が診察した、重度の後期若年性歯周炎の患者さん（25歳前後）のケースでは、１０歳前後のレントゲン記録を調べたところ、すでにその頃から若年性歯周炎の兆候が見られたそうです。小さい頃からプラークコントロールに気を配り、歯周病の予防を心がけることが大切です。特に矯正治療中は、その必要性が高いといえます。

若年性歯周炎の場合でも、歯周治療を行い、一般的なプラークコントロールきちんと実行していれば、重度の歯周病に進行する可能性は非常に低い、ということが、近年の北欧での研究・調査で報告されています※4。

＊　若年性歯周炎
歯周病の一種で、侵襲性歯周炎ともいう。病名のとおり、発症年齢は10～30代と比較的低い。発症後は急激に進行し、4～5年で50%の歯周組織が破壊される、とのデータがある。また、男性よりも女性のほうが発症しやすい傾向がある。

※4　Matsson,L , Sjodin, B,/ 毛利環,岡本浩：小児ならびに青年期歯周炎-その病因,リスク・グループと予防・治療指針、the Quintessence 21 179-186,2002.

「矯正治療中のシステマティック・プラークコントロール」研究※5を指導した
スウェーデン・イェテボリ大学歯周病科のニーマン教授（写真右、故人）と若き日の院長のショット

※5　Lundstrom F, Hamp SE, Nyman S. Systematic plaque control in children undergoing long-term orthodontic treatment. Eur J Orthod. 1980;2,:27-39.